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無法島の一件 5 緋色

last update Huling Na-update: 2025-07-06 11:57:06

夜中は確かに一階しかない古びた宿にいたはず。でもここは二階。運んでもらったってこと……アレックスが?

さっぱり意味がわからない。

「アレックス、昨夜すごい怖いことが-」

「レベッカ、土が付いてるぞ! お湯が使える順番になったから、風呂に入ったらどうだ?」

「……え?」

「ここ、お湯が出るの時間制なんだ。とにかく風呂に入れよ、な?!」

アレックスが珍しく優しい……ちょっと強引だけど。気が利くなんてどうしたの?

風呂場はシャワーだけじゃなくて、浴槽がちゃんとある。

そうだ、建物が違うんだ。甘い炒め物とアルコールの匂いが身体中からする。あの大衆食堂の匂い。

それに確かに土も服に付いていた。酔っていたから転んだのだろう。

「……ほんと汚れてる」

私はふらつきながら、湯船を貯めようと浴槽の蛇口を捻った。

ゴボッゴボッ……。

なにか詰まっているような音。私は全開に蛇口を開ける。

ゴボッ、ゴボボボーボーボー!

なっ、なんで?!

「ギャーーー!!」

真っ赤な真紅の水が吹き出してきた!

私は腰を抜かしてひっくり返った。はいつくばって、ベッドに座っているアレックスに体当たりした。

「痛っ! うるさいぞ。今度はなんだよ」

「あ、アレッ、あ、アレアレ、ア、アレックス!」

「落ち着け」

「血! 浴槽から血が! 吹き出してきたの!」

私はお風呂場を指差した。

「あぁ、確かに血の匂い」とアレックス。

ひぃぃぃと私は再び声をあげる。嗅覚の優れたアレックスが言うんだから間違いない!

「まだ眠いな」

なに言ってるのよ、逃げないと! 私は廊下に急いで出ようとした。

そのときドアがノックされた。

「待て! レベッカ」

アレックスの声も聞かず、またしても勢い良くドアを開ける。

すると、そこにはメイド服を着た少女が立っていた。あどけない少女。

かわいいけど……そんなことより、早く助けて!

「お客様、どうかなさいましたか!? 悲鳴が聞こえました」

「よかった。血が! 血が、お風呂場から出てるの!」

掃除道具を積んだワゴンが少女の後ろに置いてある。掃除の途中だったのだ。私は彼女の腕を掴んだ。

「蛇口から、真っ赤な血が出てきて!」

「ちょっと失礼させてもらいまーす」

そう言って掃除のワゴンから
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